減量による腰痛、股関節痛、膝関節痛への影響は?|体重を減らすと痛みはどれくらい軽減する?
「膝が痛いので痩せたほうがいいと言われた」
「体重を減らせば、本当に腰痛は良くなるの?」
「5kg痩せたら、膝への負担はどのくらい変わる?」
腰痛や股関節痛、膝関節痛で整形外科を受診した際に、「少し体重を減らしましょう」と言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、体重が増えるほど下半身の関節や腰にかかる負担は大きくなります。
しかし、
「具体的に何kg痩せればいいの?」
「減量すると、どれくらい痛みが改善するの?」
という疑問を持つ方も多いと思います。
今回は、減量が腰痛・股関節痛・膝関節痛にどのような影響を与えるのか、研究結果も紹介しながら整形外科の視点からわかりやすく解説します。

体重が増えると、なぜ関節が痛くなるの?
体重が増えると、その分だけ関節にかかる負担も増加します。
特に影響を受けやすいのが、
- 腰
- 股関節
- 膝関節
です。
ここで重要なのは、体重が1kg増えたからといって、膝への負担が単純に1kg増えるだけではないということです。
歩行や階段の上り下りでは、体重以上の力が関節に加わります。
そのため体重が増えると、一歩一歩の負担が積み重なり、膝や股関節などの症状に影響する可能性があります。
体重を1kg減らすと、膝への負担はどれくらい減る?
変形性膝関節症のある過体重・肥満の成人を対象とした研究では、体重を1ポンド(約0.45kg)減らすことが、歩行時の1歩あたりの膝関節への圧縮負荷を約4ポンド減らすことと関連していたと報告されています。
単純換算すると、
体重を1kg減らすことで、歩行時の膝への負荷が1歩あたり約4kg分軽減する
というイメージになります。
例えば5kg減量できた場合、単純計算では1歩あたり約20kg分の負荷軽減に相当します。
1日5,000歩歩く方であれば、この差が毎日積み重なっていくことになります。
もちろん、実際に膝へ加わる力は歩き方、速度、筋力、関節の状態などによって異なります。
「5kg痩せれば必ず膝への負担が20kg減る」と考えるものではありませんが、数kgの減量でも膝にとって決して小さな変化ではないことが分かります。
では、何%くらい減量すると痛みが改善する?
「結局、何kg痩せればいいのでしょうか?」
という疑問に対して、一つの目安になるのが現在の体重の5〜10%程度です。
例えば、
- 60kg → 3〜6kg
- 70kg → 3.5〜7kg
- 80kg → 4〜8kg
- 90kg → 4.5〜9kg
程度です。
変形性膝関節症のある過体重・肥満の方では、減量によって痛みや身体機能が改善することが報告されています。
MessierらのIDEA試験では、食事療法と運動を組み合わせた減量介入によって体重を減らした群で、膝への負荷や炎症、痛み、身体機能などの改善が示されました。
さらに、その後の解析では、10%以上の減量、さらに20%以上の減量を達成した人ほど、痛みや身体機能などでより大きな改善がみられたことも報告されています。
つまり、
「20kg、30kg痩せなければ意味がない」わけではありません。
まずは5%程度を現実的な第一目標とし、その後10%を目指していくという考え方がよいでしょう。
減量すると膝関節痛は改善する?
腰・股関節・膝の中でも、減量との関係について比較的研究が多いのが変形性膝関節症です。
体重が増えると膝への機械的な負荷が増えるだけでなく、脂肪組織に関連する炎症性因子なども変形性関節症に関与していると考えられています。
そのため、体重過多のある方が適切に減量することで、
- 歩行時の痛みが軽くなる
- 階段の上り下りが楽になる
- 立ち上がりやすくなる
- 歩ける距離が伸びる
などの改善が期待できます。
ただし、すでに関節の変形が進行している場合、減量だけで痛みがなくなるとは限りません。
薬物療法、注射、リハビリテーションなどを組み合わせながら治療することが重要です。
股関節痛にも減量は効果がある?
股関節も体重を支える「荷重関節」です。
そのため、体重過多がある場合には減量によって股関節への負担を減らすことが期待できます。
特に、
- 変形性股関節症
- 長時間歩くと股関節が痛む
- 階段で足の付け根が痛む
といった方では、体重管理も治療の一つとして重要です。
ただし、膝関節症と比較すると、減量によって股関節痛がどの程度改善するかについてのエビデンスは限られています。
そのため、「股関節が痛いから、とにかく痩せればよい」わけではありません。
まず痛みの原因を正しく診断することが大切です。
腰痛にも減量は効果がある?
体重が増えると身体の重心や姿勢が変化し、腰への負担が増える場合があります。
また、
- 運動不足
- 体幹筋力の低下
- 股関節の柔軟性低下
などが重なることで、腰痛が悪化するケースもあります。
一方で、腰痛については、減量によってどの程度痛みが改善するかを示す質の高い研究は膝関節症ほど多くありません。
腰痛には、
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 変形性腰椎症
- 筋・筋膜性腰痛
などさまざまな原因があります。
したがって、「減量すれば腰痛が治る」と考えるのではなく、腰痛の原因を確認したうえで、体重過多があれば減量も治療の一つとして取り入れることが重要です。
「痛くて運動できない」――減量したいのに減量できない悪循環
関節痛のある方で、非常に大きな問題になるのが、
膝・股関節・腰が痛い
↓
運動できない
↓
活動量が減る
↓
体重が増える
↓
関節への負担がさらに増える
↓
もっと痛くなり、さらに動けなくなる
という悪循環です。
「体重を減らしてください」
「運動してください」
と言われても、膝や股関節が痛くて歩くことさえつらい方にとっては簡単なことではありません。
むしろ、減量のために無理にウォーキングを始め、痛みが悪化してしまうこともあります。
そのため当院では、単に「運動して痩せましょう」とお伝えするのではなく、痛みの原因を治療しながら、無理なく体重を減らしていくことが大切だと考えています。
関節を守りながら減量するには?
① 食生活を見直す
減量は運動だけで行うものではありません。
運動が十分にできない方でも、食事内容や摂取エネルギーを見直すことで減量は可能です。
極端な食事制限ではなく、継続できる方法を選ぶことが重要です。
② 関節への負担が少ない運動を選ぶ
痛みの程度にもよりますが、
- 水中ウォーキング
- 自転車・エアロバイク
- 痛みの出ない範囲での筋力トレーニング
などは、ウォーキングやランニングより関節への衝撃を抑えながら運動できる場合があります。
③ リハビリテーションを組み合わせる
「痛いから動かさない」という状態が長く続くと、筋力が低下し、かえって関節への負担が増えることがあります。
理学療法士によるリハビリテーションでは、
- 筋力改善
- 柔軟性改善
- 歩行指導
- 姿勢改善
- 自宅での運動指導
などを行います。
減量+リハビリテーションによって、体重だけでなく「動ける身体」を取り戻すことが重要です。
痛くて運動できない方へ|GIP/GLP-1受容体作動薬という選択肢
「膝が痛いから体重を減らしたい」
しかし、
「痛くて運動できないから、なかなか体重を減らせない」
という方もいらっしゃいます。
当院では、このような関節痛と体重増加の負のループに陥っている方に対する選択肢の一つとして、適応を確認したうえでGIP/GLP-1受容体作動薬を用いた体重管理にも対応しています。
GIP/GLP-1受容体作動薬は食欲や摂取エネルギーなどに作用し、肥満症に対する治療選択肢として使用される薬剤です。
重要なのは、薬を使用して「ただ体重を落とす」ことが目的ではないということです。
当院が目指しているのは、
体重を減らす
↓
膝・股関節・腰への負担を減らす
↓
痛みを軽減する
↓
少しずつ動けるようになる
↓
運動・リハビリができるようになる
↓
筋力を維持し、さらに関節への負担を減らす
という良い循環を作ることです。
なお、GIP/GLP-1受容体作動薬はすべての方に使用できるわけではありません。
既往歴や現在の健康状態、使用している薬剤などを確認し、医師が適応を判断する必要があります。また、副作用などについて十分に理解したうえで治療を行うことが大切です。
体重だけを減らせばよいわけではありません
減量の際にもう一つ重要なのが、筋肉をできるだけ維持することです。
極端な食事制限などで急激に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉まで減少する可能性があります。
筋力が低下すると、
- 膝を支える力が弱くなる
- 歩行能力が低下する
- 転倒しやすくなる
など、関節にとって逆効果になる場合があります。
特に中高年の方では、体重という数字だけを見るのではなく、脂肪を減らしながら筋肉を維持することが大切です。
まずは「体重の5%」を一つの目標に
「結局、私は何kg痩せればいいのでしょうか?」
膝関節痛については、まず現在の体重の5%程度を一つの現実的な目標として考えてみましょう。
例えば、
体重80kgなら、まず4kg。
最初から20kgの減量を目標にすると、「自分には無理」と感じてしまうかもしれません。
しかし4kgであれば、少し現実的に感じられるのではないでしょうか。
そして5%減量した時点で、
- 痛みはどう変化したか
- 歩ける距離は伸びたか
- 階段が楽になったか
- 筋力は維持できているか
を確認しながら、必要に応じて次の目標を設定します。
まとめ|減量の目的は「痩せること」ではなく「動ける身体を取り戻すこと」
減量は、腰痛・股関節痛・膝関節痛をすべて治す万能な治療ではありません。
しかし、特に体重過多を伴う変形性膝関節症では、減量によって関節への負担を軽減し、痛みや身体機能を改善できる可能性があります。
そして大切なのは、
「少し痩せても意味がない」ということはない
ということです。
数kgの減量でも、毎日の歩行で膝にかかる負担を考えれば大きな意味があります。
一方で、
痛い → 動けない → 太る → さらに痛い
という悪循環に陥ってしまうと、自力で抜け出すことが難しくなる場合があります。
そのようなときは、無理に運動を続けるのではなく、整形外科で痛みの原因を調べ、リハビリや体重管理を含めた治療を検討することをおすすめします。
大阪市平野区・八尾市で「関節痛+体重」のお悩みがある方へ
みかわ整形外科クリニックでは、腰痛・股関節痛・膝関節痛の診断・治療だけでなく、関節への負担を軽減するための体重管理にも取り組んでいます。
理学療法士によるリハビリテーションに加え、適応のある方にはGIP/GLP-1受容体作動薬を含めた体重管理(自費診療となります)についてもご相談いただけます。
「痩せたいけれど、膝が痛くて運動できない」
「体重を落として、もう一度歩けるようになりたい」
「腰や股関節への負担を減らしたい」
という方は、お気軽にご相談ください。
私たちが目指すのは、単に体重を減らすことではありません。
体重を減らすことで身体への負担を軽くし、「動ける身体」を取り戻すことです。

参考文献
- Messier SP, Gutekunst DJ, Davis C, DeVita P. Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis. Arthritis Rheum. 2005;52(7):2026-2032. doi:10.1002/art.21139.
- Messier SP, Mihalko SL, Legault C, et al. Effects of intensive diet and exercise on knee joint loads, inflammation, and clinical outcomes among overweight and obese adults with knee osteoarthritis: the IDEA randomized clinical trial. JAMA. 2013;310(12):1263-1273. doi:10.1001/jama.2013.277669.
- Messier SP, Resnik AE, Beavers DP, et al. Intentional weight loss in overweight and obese patients with knee osteoarthritis: is more better? Arthritis Care Res (Hoboken). 2018;70(11):1569-1575. doi:10.1002/acr.23608.
監修医
みかわ整形外科クリニック
院長 三河 聡志
日本整形外科学会専門医。
近畿大学医学部卒業後、基幹病院にて外傷・関節・脊髄疾患など幅広い手術・診療に従事。
2023年「みかわ整形外科クリニック」を開院。
地域のかかりつけ医として一人ひとりに寄り添う医療を提供している。
所有資格
- 日本整形外科学会専門医
- 日本整形外科学会認定リウマチ医
- 日本整形外科学会認定スポーツ医
- 麻酔科標榜医
医院詳細
〒547-0012
大阪府大阪市平野区長吉六反4-6-13
長吉六反クリニックビル 2階
みかわ整形外科クリニック
